2023/10/04 14:26

雲南コーヒーシリーズの第一弾

第一弾はMENGLIANの豆です。

「孟連」と書いて、「メンリァン」と呼びます。

【MENGLIAN doublefermentaion natural】

Farm : XINGANG Coffee Farm

Variety : Catimor Altitude : 1620m Process: Double Fermentation Natural


【味の印象】 

爽やかな柑橘感とともにコク感、深みのある甘みが特徴です。切れのよいアフターも飲みやすさを感じます。

 第一弾ということで誰が飲んでもおいしく頂きやすいように、浅すぎない中煎りで仕上げました。 

 オレンジではなくマンダリンオレンジという感じ。 ちょっと深みのあるしっかりとした甘みが、飲みごたえを感じます。


【地域特性】 

 孟連⾃治県自体はプーアル市に管轄されています。

 優秀なスペシャルティコーヒーが続々と出ているそうで、知名度がどんどん⾼くなっているエリアだそうです。 その中でXINGANG(信崗)村に住む和族(少数民族の一つ)たちは、ほとんど女性だけがコーヒーを栽培しています。 

プーアル茶の生産地としても非常に有名です。

 設備更新も頻繁に実施されている故に、スペシャルティコーヒーの品質が雲南最上級ランクに位置されています。 総⽣産量は多くありませんが、専⾨性の⾼い管理⽅法によって品質は⾮常に安定しています。 カッピング(SCA⽅式)で85点以上取るコーヒーもよく出回っています。


【Process(発酵、精製方法)】

 今回のMENGIAN double fementation natural は、 中国のお茶の製造に由来する工程が色濃く残っています。 

 まず洗浄されたコーヒーチェリーをアフリカンベットで薄く広げ、パルプの表面にシワが出るまで乾燥させます(ナチュラル)。 

それは古来中国茶の精製処理には不可欠な「萎凋」という工程から着想しており、その後にも「渥堆」という方法を使い、コーヒーチェリーを山積みになった状態で放置し、中心部の温度を一定に保ちながら発酵させます。 

このようなドライファーメンテーションは2回実施されます。

 (なのでダブルファーメンテーション) 

 ダブルファーメンテーションというとすごく複雑な工程を経ているように思いますが、

実はプーアル茶の伝統的な製造方法になぞった発酵方法をしています。 

酸素と接触している状態で発酵しているため、 マンダリンオレンジのような濃いめの爽やかさと、

チョコレートのようなスイートネスが特徴です。





「雲南コーヒー、始めます」- 店主 倉橋の想い -

2000年、 まだ21歳のころに中国に1年だけ留学しました。場所は雲南省昆明市。

 お恥ずかしながら、留学というのは名ばかりで、 勉強はそっちのけ。 

現地で知り合った中国人の友達と、 ただひたすら白酒をのみ交わすことで 少しずつ中国語を覚える毎日でしたw 

それが良かったことかはさておき、 人生で一番友達ができた日々でした。 

 たった一年ですが、 自分の人生に色濃く残る思い出と思い入れのある地、雲南省。

 留学期間を終え、日本に帰るときに現地の友達に雲南コーヒーの生豆をもらいました。

 そして、日本で専門家の伊藤さんという方と一緒に手回しロースターで焙煎しました。

 1ハゼの音を聞き、2ハゼの音を聞き、香りを確かめながら、煎り終えたら風を送って急冷する。 

これがはじめての焙煎経験でした。

当時、現地のウォルマートでも雲南コーヒーは販売されていたし、

雲南省でコーヒー豆が栽培されている事をなんとなく知っていたけれども、

まさか自分がロースターになるなんて思っていなかったので、

そこから知識を深めることもなかったし、

現地でコーヒー豆が栽培されていることに注目することもあまりなかったです。

2年前、MOUTAINMOVERという雲南省の豆を扱う会社さんを知りました。 

当店でもこちらの会社の力を借りて、 雲南の豆を扱ってみるチャンスだなと思いました。

 留学から二十数年を経て、雲南のコーヒーを扱う。 これも何かのご縁かと思っています。

 先日、代表の趙さんに会いに東京に行ってきました。 

雲南省の栽培、流通の実情や、精製、ファーメンテイションに対する考え方など、お時間をいただき色々と話を聞いてきました。

それはもう真剣に真摯にはなしてくださって、 僕自身もきちんと内容を消化して、 きちんと皆さんにお伝えできたらいいなと思います。


「趙さんに話を伺いました」-コーヒーの発酵に関して-

コーヒー業界で、「発酵」というと、ひと昔前は、

「ミューシレージ」というぬめぬめの粘着性物質を取り除く方法という意味合いが強かったです。

私がスペシャルティコーヒーに携わるようになった10数年前はまだそうでした。

 しかし最近は、それだけではありません。 

「発酵」工程を経て、「香味を引き立たせる」新たなコーヒーづくりの重要なアプローチの一つになっています。 

 私自身は、コーヒーの精製の過程の発酵方法により特殊なフレーバーが付与されること、 発酵がそのコーヒーの持つフレーバーを左右していくこと、 このことには少し抵抗がありました。 

「後付け風味」みたいな気がして、 

その豆の持つ本来のポテンシャルでコーヒーの味は決定されなければいけない!と、極端に思いこんでいたと思います。 

 今回、趙さんに話を伺って真剣にこの「発酵工程」に向き合い、

現地でも技術指導をしている状況などを伺い、少し考え方が変わるようになりました。 

 特に、「雲南」のコーヒーだから余計に発酵の重要度がすんなりと聞き入れられたのかもしれません。

 というのも、雲南省は世界的にも知られる「プーアル茶」の産地です。

 実は私たちの身近にある「お茶」もこの「発酵」によって風味の特性を決定づけられているのです。 

お茶は、「萎凋」とよばれる「酸化」工程を経て(一般的な微生物による発酵とはやや意味合いが違いますが) 

酸化酵素による酸化反応の度合いなどによって、ウーロン茶(青茶)、紅茶、などが作られています。

そして、雲南の代名詞「プーアル茶(黒茶)」は微生物の働きによる(本来の意味での)発酵によって作られます。

 古い倉庫には壁や床に「蔵持ち酵母」と呼ばれる発酵に最適な変化を遂げてきた優良酵母や優良麹菌が生息しています。 

倉庫の中に山積みにしてシートをかぶせ発酵させるのです。この作業を「握推(wodui)」と呼ばれるそうです。

 どんな発酵をさせるか、発酵の為にどの微生物を発酵の母体とするのか、そのためにあえて酵母を加えるのか? 

お茶だけではないです。

 ワインも、日本酒も、様々な発酵工程を経て出来上がる品物はみな、

この特別な工程を経て特別な風味を手に入れているのだということです。 

 なぜコーヒーはそうあってはならない?? 

コーヒーは、今まさにあたらしい世界へと向かっているのかもしれない。

 そう思った時、 ファーメンテーションへの探求はより興味深くなりました。

 そして、古えからこの「ファーメンテーション」の文化を持った地域の民族が

生み出すファーメンテーションコーヒーというところに、私は奥深さと面白味を感じています。