2025/11/08 23:40
― 三つの青き空と、ひらかれていく心 ―

2025年3月。
コスタリカのタラス地域にある、いくつかのマイクロミルを訪ねました。
このような現地への買い付けと産地訪問は、この仕事に携わって十年以上になりますが、
実は、これが初めての経験でした。
= コスタリカで出会った三つの「青い空」=
今回のブレンド「蒼天 – PURA VIDA AZUL」は、
コスタリカ・タラス地区で出会った三つのマイクロミルの農園の豆を
ひとつに合わせたブレンドです。
Santa Rosa 1900(Macho / Catuai / White Honey)
標高1900m、鮮やかな青空が広がる高地の農園。
農園主マチョ氏と、その息子ケビンが丁寧に仕上げるホワイトハニー精製の豆は、
豊かな水源に恵まれ、清らかで涼やかな印象を持っています。
白ぶどうやカモミールを思わせる、静かで純度の高い甘さ。
「澄んだトップ」と「長い余韻」を生み出す、蒼天の中心的存在です。
Monte Copey El Alto(Caturra / Red Honey)
情熱的な生産者、エンリケ・ナバーロが率いるマイクロミル。
赤りんごやいちごのようなジューシーな果実味、
そしてトフィーのような甘さが重なり、カップの中に奥行きを与えます。
透明感とのびやかな甘みがあり、味わいに生命力を感じます。
La Candelilla(Caturra / Honey)
家族で営む、コスタリカマイクロミル革命の祖とも呼ばれる歴史あるミル。
どこか牧歌的で温かい雰囲気に包まれています。
砂糖きびやナッツを思わせるやさしい甘香が特徴で、
後半の落ち着いた丸みを生み出す“地”のような存在。
仕事にも性格にも、家族の温もりがそのままに現れています。
この三つに共通しているのは、コスタリカのこの地方特有の「甘さ」です。
静かで、謙虚で、清楚な甘さ。
これが、コスタリカコーヒーの美徳だと感じました。
ただし、その“甘さ”の表情はそれぞれ少しずつ違う。
精製方法も異なり、重なり方にも個性があります。
一本の太い甘さの軸を保ちながらも、
複層的で段階的な甘さのニュアンスが折り重なっていく。
白い花の香りから始まり、赤い果実が重なり、
最後には蜜のような甘さがゆるやかに残る。
中心にあるのは、清らかさの中にある「甘さ」です。
■ 「Pura Vida Azul」という名に込めた想い
“Pura Vida”――
コスタリカの人々が日常で交わす言葉。
「大丈夫」「最高」「しあわせ」――そんな意味を包みこんだ、やさしい挨拶です。
旅の途中、何度もこの言葉を耳にしました。
“¡Pura Vida!”
うまくいく日も、そうでない日も。
この言葉には、どこか不思議な力があるようです。
深呼吸をするように、心をほどいてくれる。
その“Pura Vida”に、スペイン語で“青”を意味する“Azul”を重ねました。
Pura Vida Azul。
私がコスタリカで見た、三つの青き空をイメージして名づけました。
= 「蒼」という色の味わい =


日本語名は「蒼天」。
このブレンドは、“蒼”という言葉を象徴する存在です。
深みのある青をテーマにしながらも、
その味わいはむしろ透明で、軽やかで、余白を感じさせる。
トップノートには、白ぶどうやオレンジの清らかな香り。
中盤には、赤りんごやいちごの果実味。
ラストには、蜂蜜とカモミールのような穏やかな余韻。
コスタリカらしいクリーンさをそのままに、
舌の上でゆっくりと雲が流れていくような、
やわらかく変化する甘さの余韻を。
空を見上げながら飲んでほしい一杯です。
深呼吸するように、一口ごとに世界が少しずつ澄んでいく――
「蒼天」はそんなコーヒーです。
= このコーヒーができるまで=
実は、これまで当店ではコスタリカの豆を扱う機会が多くありませんでした。
旧焙煎機では、現地の豆が持つ“静かな酸”や“繊細な甘み”を、
私自身の技術ではうまく表現しきれなかったからです。
GIESEN社製の焙煎機に切り替えてから、豆の個性をより緻密に引き出せるようになりました。
そのタイミングで初めて現地を訪れ、三つの農園の人々と出会いました。
彼らの仕事は、まっすぐで、丁寧で、嘘がない。
その姿勢が、そのまま“青”のように澄んでいました。
このブレンドには、装飾や技巧は要りません。
ただ、三人の生産者の誠実な仕事を、そのまま合わせる。
それだけで「蒼天」は自然と完成しました。
= BASE販売ページはこちら=
蒼天 – PURA VIDA AZUL(BASE公式ショップ)
100g/200g/500gをご用意しています。
豆でも粉でもお選びいただけます。
パッケージは白を基調に、淡い空のブルーをアクセントにしたデザイン。
澄みわたる空気感をそのまま手のひらに届けたい、という思いを込めています。
=最後に =
“蒼天”を口にすると、ふと、コスタリカのあの空を思い出します。
標高1900mの乾いた光、山々の稜線、遠くで鳴く鳥の声。
あの空の下で交わした「Pura Vida」という言葉。
ホワイト革命なんていわれる時代。
時に光はまぶしすぎて、時に水は清らかすぎる。
きれいごとがきれいすぎて、息が詰まる。
そんな狭い世界の中では、私はいつもきれいごとを少し斜めにとらえてしまうタイプです。
でも、
そんな狭い世界の中では、私はいつもきれいごとを少し斜めにとらえてしまうタイプです。
でも、
あのコスタリカの「蒼き空」は、間違いなくまぶしく、清らかでした。
それで息は詰まることはない。
自由で率直な、開けた空だからだ。
それで息は詰まることはない。
自由で率直な、開けた空だからだ。
生きるには、立ち止まる時間が必要です。
深呼吸をして、心をひらいて、もう一度、自分の歩幅を確かめるような時間。
深呼吸をして、心をひらいて、もう一度、自分の歩幅を確かめるような時間。
「蒼天」は、そんな時間に寄り添うためのコーヒーです。
澄んだ空のようにやさしく、そして確かに、あなたの心をひらいてくれる一杯。
一口飲むたびに、世界がすこし透きとおる。
それが、“蒼天 – PURA VIDA AZUL”の正体です。



